公開日 2019年2月6日
更新日 2019年2月28日
- 地域
- 下北地域
- 名称
- 龍舌の滝(りゅうぜつのたき)
- 所在
- 臼杵市藤河内小出
- 備考
- 昭和61年10月調べ
- 説明
- 名瀑布といわれる大きな滝は、県内のいたる所で見られます。深い山の渓谷などでは、その大小を別にしても必ず一つや二つは見ることができます。高所から滝つぼへ一筋の糸のように落ち、しぶきを上げるさまは、まさしく自然の醍醐味といえます。滝をじっと眺めていると、ふっと、幽玄の世界に引き込まれることもあります。
規模の大きなものではありませんが、高さ10m前後の小さな滝なら市内にも数ヶ所あります。その中でも比較的良く知られていたものに海添のカケハシの滝、山庵の北西山中にある四国八十八ヶ所霊場の中の滝、そして、小出観音堂の北にある滝などがあります。
この三つの滝の中でも古い記録に載っているものに小出観音堂の北にある龍舌の滝があります。寛保元年(1741)太田重澄によって著された「臼陽寺社考略記」の小出観音堂の条に「往古以来、観音隣谷ニ在リ-中略-此谷ニ飛流有リ 故ニ紀州那智山ニ准ス -後略-」とあります。享保六年(1721)、小出に観音堂を営み、海部郡における三十三ヶ所観音霊場の第一番札所としたのは、このお堂の奥の谷にある滝を紀州国(現、和歌山県)の那智山の滝になぞらえてのことと記されています。
龍舌の滝は、滝つぼまでの高さがおよそ8m程度と小規模なものですが、樹木が生い茂り、薄暗くうっそうとした雰囲気の中で、谷間にこだまする滝の水音を聞いていると、いかにも幽玄の世界に足を踏み込んだという感慨を覚えます。
またこの滝の北東側の岩壁中腹には、高さ58cm、上部幅72cm、下部幅22cmの扇形をした石祀(せきし)が安置され、その内部に鋳型で作られた高さ15cmの青銅製の懸仏と長さ16.5cmのやはり青銅製の和鏡が納められています。さらにこの石祀の近くには、正面中央に「南無観世音菩薩」と陰刻された高さ約80cmの緑泥片岩製の板碑も安置されており、この場所が昔から人々の観音信仰の場、すなわち霊地となっていたことがうかがわれます。