公開日 2019年2月7日
更新日 2019年2月28日
- 地域
- その他
- 名称
- 竜王塔(りゅうおうとう)
- 所在
- 備考
- 平成2年1月調べ
- 説明
- 水は、私たちが生きていく上で欠くことのできない大切なものの一つです。したがって、人間は、この水を大事に扱い、利用しながら生活をしてきました。飲料水として、また、炊事、洗濯などの生活水、更に農業用水、工業用水などとして様々に利用しています。
こうした水の利用は、昔も今もまったく変わりがありません。水は、私たちが生きてゆくための命の元といっても過言ではないと思います。したがって、人々は、自分たちの生活や命をも時によっては左右する力を持つ水というものには神が宿っていると信じ、恐れ、敬って大切にしてきました。昔から人々は、自分たちの力ではどうすることもできないほどに大きな力を持っている自然、あるいは自然現象といったものに畏怖の念をいだき、崇敬を払ってきました。
家の内にある井戸、あるいは、常に水がこんこんと湧き出る泉や湖沼などに水の神としての「水神様」がお祭りされていることなどを見てもそのことは十分うかがえます。ですから、雨が降らず日照りが続き、湖沼などが干上がり、生活を支えてくれる作物などに大きな影響を及ぼすような事態が起きてくると、その神になんとか行き詰まった状態を解決してくれるようにと祈りを捧げてきました。集団で行う「雨乞い」という行事は、まさにそうした神への切実な祈りであったといえるでしょう。雨乞いは、地域の人々が総出で祈祷し、「八大竜王」あるいは「降雨請願八大竜王」などと大書した紙旗を立て、盛大に太鼓や笛などを交えた風流を奏したといわれています。
臼杵においてもこうした雨乞いが昭和二十年ごろまで行われていました。そして雨乞い場所としては、天に少しでも近いところという意味もあって、山の小高い場所が選ばれていたようです。また、雨乞い場所に石塔を立て祈願したところもあります。市内前田地区と市浜・戸室地区の境目を南北に走っている国道217号(熊崎バイパス)の桜台・山の手区入口の反対側斜面に設けられている石段を上がり、急な山道を二百五十mほど登りつめると高圧線の鉄塔が建てられている尾根に出ます。その鉄塔から十mぐらい手前、標高約百六mの位置に雨乞い祈願のために建てられた石塔が残っています。この石塔は、安政三年(1856)の二月に建てられたもので正面(東面)には「奉請竜王神宝塔」の文字が刻まれています。臼杵は、山が浅いこともあり、冬季になると水不足が生じますが、このような水不足の事態は昔からあったことを石塔は如実に物語ってくれます。